憧れの球面ズミルックス。Leica Summilux 35mm F1.4 2ndを手に入れた。

Leica

本当に買ってしまった

先日、「6枚玉」の愛称で親しまれているSummicron 35mm F2を手に入れました。

普通が普通に写るレンズ。Leica Summicron 35mm F2 6枚玉を手に入れた
6枚玉と言われるLeica Summicron 35mm F2 を手に入れました。なんで買ったのかと言うのと実際に撮ってみた写真を載せていきます。


購入してから約1ヶ月。毎日のように持ち歩き、その軽快さと素直な描写を楽しんでいました。

以前から、ライカの歴史的名玉であるSummilux 35mm F1.4 2ndの存在ももちろん知っていました。ただ、正直なところ購入するつもりは全くありませんでした。
価格は6枚玉の約2倍。当時の自分は「さすがにその価格差ほどの描写の違いはないだろう」と高を括っていたからです。

35mmの画角は、
・Summicron 35mm F2(6枚玉)
・Summilux 35mm F1.4 ASPH.(現行4th)
この2本があればそれで十分。そう考えていました。

……なのに、気が付けば防湿庫に3本目の35mmが増えていました。


自分でも驚いています(笑)。




なぜ買ったのか

今でも自分に問いかけます。「なんで買ったんだろう」と。
そのきっかけは、本当に偶然の巡り合わせでした。

新宿へ行った際、いつものようにふらっと立ち寄ったカメラ店。防湿庫を眺めていると、状態の良いSummilux 35mm F1.4 2ndがなんと3本も並んでいました。しかも、そのうちの1本は以前から密かに憧れていたチタン仕様。思わずテンションが跳ね上がりました。

ただ、チタン仕様は価格が他の個体より10万円以上高い。さすがにそこまでは予算が届きません。そこで残った2本のうち、価格が現実的な方を試写させてもらうことにしました。

その瞬間でした。
「あれ、思っていたよりずっといい。」

以前、別の店で試した個体は開放での滲みがかなり強く、自分にはクセが強すぎる印象がありました。しかし、目の前にあるこの個体は違いました。開放特有の滲みはあるものの、それが品良く程よく抑えられていて、とても実用的に扱いやすい描写だったのです。
店員さんに尋ねると、「この年代のレンズは本当に個体差が大きいです。滲みがもっと暴れる個体もありますよ」とのこと。まさにライカらしい、一期一会の話だなと思いました。

さらにレンズ自体のコンディションも素晴らしく、前玉・後玉とも非常に綺麗。クモリもなく、目立つキズもありません。その美しいガラスを覗き込んだ瞬間、以前「貴婦人(Summilux 50mm 1st)」を我が家に迎えたときと全く同じ感覚が、全身によみがえってきました。

「このレンズを、自分が次の世代へ受け継いでいきたい。」

そんな、半ば義務感のような熱い気持ちになってしまったのです。
とはいえ、6枚玉を買ったばかり。簡単には決断できません。悶々と悩んでいると、店員さんが「3日間お取り置きできますので、じっくり考えてください」と優しく背中を押してくださり、気づけば台帳に自分の名前を書いていました(笑)。

そこからの3日間は、本気で葛藤しました。
「これを見送ったとして、また同じように状態の良い個体に、納得のいく価格で出会える保証がどこにあるのか?」
一方で、怒涛のようにお金を使っている現実もあります。

最終的に出した結論は、極めてシンプルでした。
「お金は後から働いて何とかすればいい。でも、この個体との出会いは今、この瞬間しかない。」

カードの引き落としタイミングを計算すれば、資金を段取る時間は作れる。それなら、見送って後から指をくわえて後悔するより、自分の手元に迎えよう。そう心に決めて、お迎えすることにしました。




概要・スペック

項目 内容
レンズ名 Leica Summilux 35mm F1.4 2nd
焦点距離 35mm
開放F値 F1.4
最短撮影距離 1.0m
フィルター径 Series VII(シリーズ7)
製造国 Canada(LEITZ CANADA刻印)
世代 第2世代(球面設計)

■ 外観とユーティリティ

驚くべきは、そのサイズ感です。見た目のボリュームは、F2の6枚玉と驚くほどよく似ています。それなのに、中に入っているガラスは開放F1.4。
コンピューターによるレンズ設計がまだ一般的ではなかった時代に、この極小の鏡筒サイズでF1.4の大口径を実現した当時の職人たちの技術力を考えると、畏怖の念すら覚えるほど素晴らしい設計です。


唯一、人によっては気になるかもしれない点が「最短撮影距離が1m」であること。ただ、私自身はスナップにおいてそこまで被写体に寄って撮ることが少なく、どうしても近接撮影が必要なシチュエーションであれば現行の4th(ASPH.)を持ち出せばいいだけなので、実用上で困ることはありません。

今回購入した個体はカナダ製。ミーハーと言われればそれまでですが、鏡筒に刻まれた「LENS MADE IN CANADA」の刻印を見るだけで、ファインダーを覗く前から少し嬉しくなってしまいます(笑)。


ちなみに店頭には、後年のドイツ製(LEICA刻印)の個体もあり、価格はかなり高めに設定されていました。一般的には後期生産のドイツ製の方が描写が安定していると言われているので、今思えば、自分の個体との比較のために試写だけでもさせてもらえば良かったかな、とも思っています。




実際に撮ってみた

まずは、M10 Monochromに装着して夜の街へと連れ出してみました。
カメラにマウントしたときの第一印象は、「やっぱり6枚玉と重さも佇まいもほとんど変わらないな」という心地よさでした。

いざシャッターを切ってみると、開放F1.4では確かにハイライトを中心に美しく滲みます。でも、不思議なことにピント面の芯まで甘く崩れているわけではないのです。むしろ、「この滲みという個性を、自分の表現としてどう作品に昇華させるか」と、撮影者の感性を刺激し、挑戦してくるようなレンズ。まさに、撮り手の腕を試す『クセ玉』です。


一方で、F2付近まで少し絞り込むと、一気にその表情が変わります。線が引き締まってシャープになりながらも、どこか球面レンズらしい品のある柔らかさが階調の底に残る。その劇的な変化を目にした瞬間、胸の中で確信しました。
「やっぱり、これは6枚玉のF2とは違う世界だ。」

数値上の描写の違いは、他人から見れば本当に僅かなものかもしれません。でも、その僅かな空気の違いが、自分にとっては表現として決定的に大きく、無視できないものに感じられたのです。
そして、ある一枚を撮り、ディスプレイで確認したときにすべてを理解しました。
「ああ、自分はズミルックス側の人間なんだな」と。

その確信をくれた一枚が、こちらです。



この写真を見返したとき、開放F1.4がもたらす光のまとい方、とろけるような周辺のボケ、そしてスープラの美しいボンネットからヘッドライトへと滑らかに流れていくハイライトの階調表現。
もちろん、6枚玉を使っても素晴らしい写真は撮れます。でも、この一枚を見たときだけは、「これだ。これこそが、自分がずっと求めていた描写なんだ」と、魂の底から素直に思えたのです。

だからこそ、私がこの高価なレンズを買い増した理由は、スペックシートの数字ではありません。ただ純粋に「自分が一番好きな写真が撮れた」。それがすべてであり、一番の理由でした。

開放での妖艶な柔らかさと、少し絞ったときのキリッとした現代的な締まり。この極端な二面性こそが、このレンズの底知れない魅力です。
唯一の実用上の問題は、天気の良い日中だと、M10 Monochromのシャッタースピード限界(1/4000秒)ではF1.4開放が露出オーバーになり、NDフィルターが必須になること。しかし、Series VII用のNDフィルターは今や市場でほとんど見かけません。そんな光が強すぎるシチュエーションでは、電子シャッターで超高速シャッターが切れるSL2-Sにマウントして、その真価を発揮させようと思っています。




結論:やっぱり自分はズミルックス側の人間だった

6枚玉を買ったとき、「自分の35mmスナップはこれで終着駅だ」と思っていました。
しかし、実際にこのSummilux 35mm F1.4 2ndを手にしてシャッターを切ったことで、ごまかしようのない事実に気づかされました。

それは、私はどこまでも「ズミルックスの描く、ドラマチックな光」に強く惹かれてしまう人間だった、ということです。

もちろん、先に手に入れた6枚玉も大好きです。ポケットに収まるほどコンパクトで、いつでも気軽に持ち歩けて、仕上がる絵も本当に素晴らしい。けれど、被写体が光を纏う最後のほんの一瞬の空気感、そのドラマの有無において、私はどうしてもズミルックスの生み出す世界を選んでしまう。だから、このレンズとの出会いは、遠回りをしたようでいて、実は最初から必然だったのかもしれません。


現状、自分がいつか手にしたいと願っていた憧れのレンズは、これでほぼすべて防湿庫に揃いました。
……周りのカメラ仲間からは「お前の金銭感覚、最近ちょっとおかしくなってないか?」と本気で心配されていますが(笑)。

しばらくは、新しい機材のスペックを追いかけるのはお休みにして、今手元にあるこの愛おしいレンズたちを使い込み、目の前の光を写真に収めることに全力で集中したいと思います。

そして、数年後にこのブログ記事をふと読み返したとき、
「あのとき、やっぱり買って大正解だったな。」
と、少し増えた写真のストックを眺めながら微笑むことができたら。それこそが、この50年近く前に作られたガラスを今に受け継いだ私にとって、そしてこのレンズにとって、一番幸せなことなのかもしれません。

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